猫事情。小鉄の脱走③
もう、夫が暗い。
猫の中で一番懐いていた猫を、自分の不注意で逃がしたのだから。
今日、夫は仕事が休みなのだ。
暗い、暗い夫がうっとうしい。
「帰ってくるかな。君の感は?」
もうめんどくさいな。夫は私の感が良いことを知っているので、しつこく聞いてくる。
正直に言うと、帰ってくるだろうけれど、何だか、スムーズではない気がする。
長期戦。どうしてもそんな気がするのだ。
感はしょせん感だ。
夫はひつこい。
何度も言っているのに、近場にいると。
実際に逃げた日は、三件となりの家の室外機の下だった。そこからまた逃げたけれど、まだそんなに遠くに入っていない気がする。
隠れていると思う。
隠れる場所は、たくさんあるから。
そんなこんなで、今日は本当に夫がうっとうしい。
昨日餌を玄関先に置いて一時間後に、全部なくなっていた。
他の猫かも知れないが、小鉄が食べたのではないかと思う。
餌を食べにきているならと、保護団体に、捕獲機を貸していただいた。
無料で貸していただき今日はその一台しかなかったと言っていた。
なのに、小鉄が、少しでぶちゃんなので気にしている。
小さいのではないかとひつこい。
「猫は狭いところに入るのだから大丈夫だ」と言っても、ぶつぶつ。
さすがに頭にきて、「じゃあ、使わないで、自分で気に入ったのを買えば。私の付き合いから、貸していただけたのに、なんなの。」
「言いたくないけど、お金は使いたくない様子だから無料で貸してもらえるところで借りたのに。文句ばかり」一週間といわれたのも気に入らない。様子。
「あなたの不注意で逃がしたのよ。言ったら可哀想だと思っていたけど、犬や猫を逃がすのこれで何度目なわけ。何度やらかしたら、性根が入るの。」
「そのたびに、私が探して、事なきを得たのは、私との関係がちゃんと動物たちとできているからだから。」
「小鉄は、あなたがかわいがっていたから、私は遠慮していて、必要以上のコミュニケーションを取っていないから、呼んでも出てこない。」
「あなたが大きな声で叫んでいるから、余計に警戒心が出て、出てこない」
小鉄を逃がしてからの、夫の落ち込みはわからないわけではないが、本当にめんどくさい。
することをして、いくしかないのに、私の言うことを聞かない。
捕獲機を設置するのも、裏庭にしようと、確かに昨日置いていたのは玄関の前だけど、ここに捕獲機をおいても入らないと思う。猫は壁に沿って、移動しているはずだから、裏のほうがいいと思う」
「餌を、昨日ここにあるとわかっているのだから、違う場所に置いたら入らない」
「玄関は明るすぎるから」
何と説明しても聞かない。
じゃあ、好きにすればと。
夫は、捕獲機の餌の置くところが悪いことがないか、もっと餌を入れたほうがいいのではと。
セットした後も面倒。
「餌を食べてもらうのが目的じゃないから。保護する、捕まえるのが目的だから」
「中の餌箱は、いつもの陶器では、暴れて割れたら怪我をするから、プラスチックでいいの」
もう、もう、夫とのやり取りのほうがつかれる。
今日、小鉄が捕まらなかったら、私は、熱を出して寝込みそう。
捕獲機をセットして一時間半立ったが、入ったような音はしない。
あ~、やっぱりな。
期待するのは、朝方かな。
もし、朝もダメなら、明日は、裏にセットしてみよう。
それにしても、大きな声を、ださないでと言っているのに、「鈴が、家にはいらないぞ~」。
近所を回っている私に怒鳴る。
鈴が、外に出ていては小鉄が帰ってこないのではと思っていたので、私が家に入るときに呼んで入ろうと思っていたのに。
「おやつで呼び寄せればいいじゃない」
「やったけど、入らない」
私が、呼び、おやつを見せると、入ってきた。夫が、後ろから押したので逃げようとしたけど、強引に、家に入れられた。
今日はこの調子では絶対に小鉄は無理だと確信した。
叫ぶなと、大きな声を出すなと言ったのに。
猫は耳が、いいと言っているのに。
イライラしたあなたの声を小鉄はきっと、聞いているから、今日は家に近づかないだろう。
昨日餌を食べているだろうから。隠れてじっとしている気がする。
本当に猫事情と書いたが、夫事情に変えたほうがよいかも。
戻ってくる気はするのだが、なんだか本当に、ポンポンと行けばいいところ、私もイライラしているからかも知れないが、小鉄はスムーズに帰ってくる気がしない。