老春時代の満足生活情報発信局(お金と暮らしと占いと人生物語)

還暦を迎え、人生を心地よく過ごし、もっと魅力的人間になる「楽しく楽しく生きる」ヒント探しブログです

看護学生時代の話。痴ほうのおばあちゃんの話。」

痴ほう老人と嫌な主任の話。

 

「鬼!お前は、人間じゃない!」

 

学校から帰ってきて、出勤したら、診察室で大きな声が。

 

痴ほうで入院している90代のおばあちゃんが、怒っている。この、おばあちゃん、怒ると手が付けられず、物を投げるし大きな声を出す。

 

なのですが、私のことはなぜか気に入ってくれていて、どんなに怒っていても、落ち着く。

 

急いで、診察室に入ると、主任が「うるさい、部屋に戻れ!」と負けずに言い返している。

 

「あっ」と思った瞬間、おばあちゃん手に持っていた洗面器を、主任に投げつけた。胸のあたりにあたる。鬼の形相で、おばあちゃんに詰め寄る。

 

先生も他の職員も、誰も止めない。痴ほうのばあちゃん、止めれば止めるほど興奮して手が付けられなくなるから。

 

「〇〇のおばあちゃん、どうしたん?」

 

声を掛けたら、私を見た瞬間に、泣きだした。

 

診察室のソファーに一緒に座る。

 

私の手を両手で、握りしめて泣いている。なのに、主任は、悪態をつこうとするので、さすがに「やめてください、泣いているのに」といったら、フンと言って、診察室から出ていった。

 

先生が、一緒に病室に行ってあげてというので、病室までいった。

 

この、おばあちゃんは炭で字を書き、詳しくは覚えていないが、〇〇市長や県のお偉いさんが、見舞いに来られる人。

 

家族が、孫だけなのだが、その孫に財産を取られる(盗られた?)と思っている。お手伝いさんに、お金を取られたといったりする。被害妄想なのか、痴ほうのせいなのか今は、わからない。ただ、その当時の看護師の話から、孫夫婦に、財産を取られたというのは、本当だったみたい。

 

妄想も激しく、放尿もするので、部屋は、おしっこくさく、学生たちで部屋の畳を、屋上に干したりしていた。

 

このおばあちゃん、すごく頭が良い人で、痴ほうでなければそれなりの生活をしている人だと思う。

 

このおばあちゃんの行為は、何人かの職員は、心で拍手していたのではないかと思う。主任に対して、当たり前のことで、怒っており、主任の人間性をすごく批判していたから。

 

このおばあちゃんのおかげで、痴ほう患者でも、人としての関わりを持てば、心を開いてくれると学んだ。

 

徘徊して他の部屋をノックして、私は幾度となく寮から、呼び出されおあばちゃんの病室に行かされた。ベッドの下に、大きな蛇がいるとこわがったり、妄想で寝れない、夜が怖いという様子だった。おしっこの匂う部屋で、眠るまで話を聞いた。すごく、色々なことを教えてくれ、痴ほうであることを忘れてしまうほど。

 

おばあちゃんは、孫夫婦のことは本当に信用していないのがわかった。孫の旦那さんが来ると部屋の物をぶつけて、「盗人!出ていけ」と怒鳴っていた。

 

怒っているおばあちゃんは、私と話をしている時の穏やかな表情はない。

 

おばあちゃんは、痴ほうでお金に対して凄く固執しているのに、私にお金を渡してくる。「これで、何か買いなさい」と。受け取ることはしないけれど、私が受け取らないとわかると、白衣のポケットに、いつの間にか入っていることがあり、気づいて、学校から帰って、慌てて戻しにいっていた。

 

とても悲しい顔をするので、「お金が欲しくて、おばあちゃんと仲良くしているわけじゃないから、いつも色々な話をしてくれて、楽しいから。お金をもらわないほうが、私は遠慮なく、おばあちゃんのところに来れるからね」といっていた。

 

年を取っても痴ほうになっても、心が正しい人はいつもきちんとした考えをもって、行動するのだと、それと、痴ほうになると、心の汚いずるい人間に対して敏感になるのかもしれないと思った。

 

だから、嫌な主任に対してはいつも、怒っていた気がする。

 

このおばあちゃんとのことは、私の看護師としての原点になっている、看護とは、心を砕くことと。