次男坊が、時計のバンド調整をしてくれと家に来た。仕事用に、ネットで注文したと。
「時計のバンド調整はしてもらえなかったの?」
「母さんができると思って、頼まなかった。」
はぁ~、できるけれども。心の声(私ができるとなぜ思ってんの)
話をしながら、調整をする。
見てるだけで、覚えようという気はないのですかと心の声。
「ところでさ、〇〇兄の話って?」
「あれね。あんた達の父親のこと。」
なぜか、ニヤニヤと笑っている。
「何がおかしいの?」
「いや~、〇〇兄ってさ、本当の母親がいるじゃない。母さんに何で聞くのかと思ってさ。困ったときとかさ、頼ってくるじゃない。昔から。」
「いつだったかな。息子がおたふくにかかった時もかかってきたじゃない。」
「あ、そうね。自分がおたふくかかっているかって話ね。」
「そうそう、あれってさ、実の母親に聞いてわからないから、母さん聞いてきたんだよね。」
「うん、そうだよ。電話でね突然俺って、おたふくしている?って。母さんはね、おばあちゃんから聞いて、知っていたから。
本当のお母さんに聞けばいいじゃないって言ったら、覚えていないって言われたって。
あんたは、体が弱かったこともあり、外で遊ばなっかたし、幼稚園も休みがちだったから、おたふくが流行っていた時にも、移ることがなかったからしていないって教えてあげたよ。」
「〇〇兄って、馬鹿じゃないのかな。だってさ、母さんが、親父と結婚した時って、もう中学一年だったんじゃない?そしたらさ、何で母さんが知っていると思うんだろう。」
「そうね、なんだろうね。きっと、何でも答えてくれる、母さんなら知っていると思うのでしょう。一緒にいるときは、あの子の小さいときの話もしていたから。生まれて、すぐに脱腸の手術をしたとか、予定日を過ぎても生まれないから、階段を何回も往復したとか。体が弱くって、冷暖房の部屋でずっといたとか。
そのせいで、自分の小さいときのことは私に聞いたらわかると思ったのじゃないかな」
「母さんは、なんで〇〇兄の事そんなに知っているの」
「そうね、主婦って、家族のことは何でも知っていないといけないと思っていたからかな。再婚するときに、何気に、情報を集めていたと思うよ。なんていうのかな、子供って、大人を試すでしょう。極端に言えば、母親なら知っていて当たり前じゃないかということを質問されて答えられなかったら、主婦としての立場がね。」
「それに自分のことを知っていると思うと、逆らうこともできないからね。
あんたは、俺のこと何も知らないなんて言わせないと思っていたからね。」
「人って、自分のことに対して、相手がすごく知っていたら、うかつに手を出せないからね。」
「母さんは、怖いなぁ」
「何言ってんの。看護師の仕事をしているとまずは、情報収集をして、看護計画を立てるから、家族計画を立てたときに、〇〇家の主婦として、家族の健康や歴史は知っておかないといけないと思っただけ。」
「お前だって、何かあったら相談に来るじゃない。」
「俺は、母さんの本当の息子だから、あたりまえだよ。それにしても、〇〇兄の中では、親父と離婚しても、母さんとつながっていると思っているみたいだね。母さんの中では、〇〇兄のことは、知人っていう位置だよね。思いが違うよね。」
「私が何も言わないことを知っているからじゃないの。頼ることもしないし、迷惑をかけることもないしね。いろいろあったけれども、〇〇君の中では、母さんといたから、今の自分があると思っているのだから。あの子が、今も私を(母さん)と思っているのならそれはそれだから。否定も肯定もしないわ。」